本来明確に決まっているはずの隣地との境界、実は曖昧なことも多いのです。このトラブルを生みやすい境界には、隣地使用や時効取得、界標設置権などが絡むこともあり、より難しい問題となります。境界に潜む多数の問題について紹介していきます。
■境界には私法上と公法上の二つがある!?
自分の敷地について、実は分かっているようで分かっていないことも多いです。
特に隣地との境界は曖昧なことも多くなっています。
そして隣地との境界の問題というのは、隣地とのトラブルの種を大いに含んでいます。
まずそもそも隣地との境界には、私法上の境界と公法上の境界とがあります。
私法上の境界とは土地の所有権の及ぶ範囲の境界であり、公法上の境界とは登記簿に登記されている土地ごとの境界になります。
私法上の境界と公法上の境界の二つがあったとしても、本来は同じ境界となるはずですが、この二つで異なることも往々にして存在します。
もし私法上の境界と公法上の境界が異なる場合、まず通常は隣地の人と話し合い、私法上の境界を確定させたうえで公法上の境界を変更するという流れになります。
ちなみに公法上の境界を変更するためには分筆と合筆という方法がありますね。分筆とは一つの土地を二つ以上に分けることを言い、合筆とは二つ以上の土地を一つの土地にまとめることを言います。
そして、もし隣地と境界位置について合意することが出来ず、裁判となった場合は、公法上の境界を確定させることで私法上の境界が決まる流れになります。
境界についてややこしい問題として、境界上に境界標があったとしても、境界標はあくまでも境界を表すための目安の一つでしかなく、必ずしも正しいとは限らないということがあります。
同様に境界塀についても必ずしも正しい境界を表しているとは限らないということは認識しておく必要があります。
さて境界が明らかになると、やはりこれから境界でもめることが無いように境界標や境界塀を設置しておきたくなります。
そして境界上への界標や囲障の設置については、界標設置権、囲障設置権が認められることになります。
界標設置権、囲障設置権とは、境界標や、境界塀などの囲障を境界上に設置するにあたり、隣地に協力を求めることができる権利のことです。
但しどちらもあくまでも設置の協力を求める権利ですので、強制するためには結局裁判沙汰となってしまうことは注意が必要です。
■境界の問題が土地の時効取得につながることも・・・
そのため、隣地ともめることを避けようと自分の敷地に境界塀を設置することもありますが、境界塀を設置するために隣地使用が絡むと更にややこしくなってしまいます。
隣地との境界近くに境界塀を築造するためには、どうしても隣地に入る必要が出てきてしまいます。
その際、境界塀の設置のために隣地の使用を請求する権利はあるのですが、通常隣地の使用には隣地からの許諾が必要となり、許諾を得ることができない場合は結局裁判沙汰となってしまい、余分な費用や時間が必要になってしまうことになります。
では隣地使用も必要無いように、更に隣地境界線から離して境界塀を設置すればいいのかというと、その際にはまた別の問題が出てきてしまいます。
その際に気を付けなければいけないのが時効取得です。
時効取得とは、「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」と民法に規定されています。つまり、当たり前のように他人の土地を使い続けていると、20年後にはその所有権を取得することができるというもの(場合によっては10年)です。
もう少し分かりやすく説明すると、境界塀を本当の境界線上よりも内側に設置し、境界塀と境界線との間の土地をそのまま長期間放置したとします。
その上で隣家がその土地を長い間自分の土地のように利用し、その状況を放置してしまうと、本来自分の土地のはずが隣家に所有権が移ってしまうことになります。
良かれと思ってやったことが結果自分の首を絞めることにもなりかねませんので、時効取得が無いように対策を取っておくことは必須だと考えておきましょう。
ちなみに隣家ともめてしまった場合は、土地の売買などを含めて金銭で解決することも当然可能です。
あまりこじれてしまっても、その後何十年も付き合っていかなければなりませんので、今後別の問題が発生しかねません。
であれば、納得いかない部分もあるかもしれませんが、解決できるのであれば金銭で解決するというのも十分有効な手だということは忘れないでくださいね。