木材のトレーサビリティにこだわる!

以前では追跡不可能だった家で使われる木の産地、今ではどの木がどこの産地か、ということを追跡できるようになってきました。なぜこのような木のトレーサビリティができるようになってきたのか、どのようなメリットがあるのかについて紹介していきます。

■木材の産地を終えることで偽装の心配が無い!

トレーサビリティとは、trace(たどる)+ability(~できる)と示されるように、商品などが生産されてから消費者の手に渡るまでの過程を「追跡できること」を表します。

日本ではBSE問題を機に、平成15年に「牛肉トレーサビリティ法」が制定され、国内の全ての牛に識別番号を付けて情報を記録・管理することが義務付けられました。

その後も、産地偽装など食の安全に関わる問題が続いたことから、主に農畜産物をはじめとする食品分野においてトレーサビリティが進められてきました。

最近では、建築材料である「木材」についてもトレーサビリティが注目され始めています。

地球規模での環境保全、違法伐採を無くすための国際的な取り組みがきっかけとなり、平成18年、「グリーン購入法」において「公共工事で使用する木材は合法性を証明できるものを使用すること」等が定められることとなりました。

とはいえ、国産の木材については、「違法伐採」の心配はあまり大きくないようです。
もちろん今後はどうか分かりませんが・・・。

さて、木材はどのようなプロセスを経て消費者のもとへ届けられるのでしょうか。

森林組合などが植林・保育した立木は、伐採後、原木市場で売買され、製材工場で角材や板材などに加工されます。

乾燥工程を終了した木材は、含水率(乾燥するほど数値が小さい、概ね20%以下を目標)やヤング係数(たわみにくさを表した数値、大きいほど強度が高い)などの測定を行います。

■木の産地が分かるだけで家の愛着が増す!?

さらにプレカット工場で柱や梁の接合部等を機械加工したものが、ハウスメーカーや工務店などに届けられます。

ハウスメーカーなどでは、自社の工場を持っていたり、流通経路を省略する独自のシステムを導入しているところもあります。
逆に、製材工場がプレカット、さらには住宅建築まで行っているケースもあります。

木材のトレーサビリティにより、このような流通の各過程における情報を記録、共有化することで、消費者(施主)は、自分の家に使われる木材がいつ・どこで伐り出され、加工されたかが見えるようになります。

おのずと木に対する関心や愛着が高まり、その気になれば、自分の家に使われる木を見に行くことも可能でしょう。

大黒柱にこだわる!」で紹介した通り、最近では大黒柱選定ツアーを行っているハウスメーカーもありますので、どこの木かということがわかるだけで愛着、思い入れが全然変わるものです。

そして施主が自分の家で使われる木が分かることで、生産者や加工者には自信を持って木材を出荷できるよう、品質管理・在庫管理のレベルアップが促されます。
森林所有者は自分の山に関心を持ち、その価値を知ることができますしね。

木材の情報を共有化することで、お互いの顔が見える家づくりが可能となるのです。

安価な輸入材に押され、いま日本各地で林業の衰退や森林の荒廃が社会問題となっています。

これを背景に、平成22年には「林業の持続的かつ健全な発展を図ること」「森林の適正な整備及び木材の自給率の向上」を目的として「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定されました。

地元材の利用を促す地産地消の試みも各地で行われています。

木材のトレーサビリティは消費者にとって安心感・満足感が得られるだけでなく、森林の価値が見直され、地方が元気になる可能性を秘めている、ということも是非知っておいてください。

Author: iehome