五感に関わる近隣トラブル

誰一人として起こしたくないけど、時には起きてしまうのが近隣トラブル。その近隣トラブルの中でも、視覚や聴覚、嗅覚など五感に関わる近隣トラブルがよくあります。事前に対策をしてトラブルを防ぐために知っておきたい五感のトラブルを紹介していきます。

■近隣トラブルにはそれ相応の理由があります・・・。

人間は、自分ではコントロールできない外的要因により、ストレスを感じる生き物です。特に、多くの人にとって「住宅」は心と体を休める場所ですから、それが妨げられた場合のストレスは、時に大きなものとなります。

人間は、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の五感を通して世界とつながっていますが、ここではご近所さんとのトラブルにつながり易い、視覚・聴覚・嗅覚について考えてみましょう。

「視覚」に関するトラブルとして、「見られる」ことに由来するトラブルが挙げられます。

こちらを覗き込むようにして隣地に建物が建てられた場合など、建物の配置や窓の位置を変えてもらうことは簡単ではありませんが、民法(第235条)では「境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。」と規定されています。

もう一つ「視覚」に関するものとして、眺望権の係争があります。新しい建物が建ったことで、窓から見える景色が損なわれてしまった場合などです。

主にマンションなどの高層建築物に見られる事例ですが、「眺望」は健康的な生活を営むうえで必要不可欠とは言えないなどの理由で、単純にこれを認めた判例は少ないようです。

■気にするかどうかは人により異なる・・・

「聴覚」に関するトラブルと言えば、やはり騒音問題でしょう。「隣家に設置されたエアコン室外機の音が気になり、眠れない」などのケースが考えられます。

判例によると、騒音が「受忍限度」を超えているかどうかが判断基準となります。世間一般に普及しているようなエアコン室外機の音であれば、受忍限度を超えていると認められるのは難しいかもしれません。

また、単純に音の大きさだけではなく、隣人がこれを抑えるための努力を行っていれば、それも加味して判断されるケースが多いようです。

「嗅覚」に関するトラブルの事例としては、「隣家の換気扇からの匂いが屋内に流れ込む」ケースなどがあります。この場合も、騒音と同様に、「受忍限度」を超えているかどうかが判断基準となります。

規制地域内の工場などの事業所から出る悪臭については、「悪臭防止法」で一定の制限が設けられることもありますが、一般生活における「匂い」について、「受忍限度を超えた」と認められることは、容易ではありません。

これらの近隣トラブルに共通することは、人はお互いに、生活を営む「権利」を持っているということです。

音や匂いを一切出さずに生活を営むことはできません。どこまでが「受忍限度内」なのかは、人それぞれにレベルや考え方が違うため、非常に判断が難しいところです。

一方、都市計画法や建築基準法では「用途地域」などにより、建築可能な建物の用途や、ボリューム(建ぺい率・容積率)、日影規制などが明確に定められています。

これらの規制内容をしっかりと理解しておくことで、付近にどんな建物が建築可能なのか、最低限のリスクは事前に把握することができるのです。

街並みに合わせることも必要」では、外観を街並みに合わせることを提案させて頂きました。
ただ、外観だけではなく、周囲と調和して生活していく、ということを意識したうえで事前に視覚、聴覚、嗅覚についても考慮しておき、周囲のことも考えた家にしておくと、自分自身も住み良い家になってきますので事前の検討は忘れないようにしてくださいね。

Author: iehome